左下7番の歯肉の腫れが気になるということで
ご来院された患者様です
痛みはありません
早速 口腔内写真を撮ってみると
〇で囲んでいる部分に 少しふくらみがあります
レントゲンにて確認したところ
歯の神経はしっかりと取ってあり(抜髄済)
大きな病巣は確認できません
しかし
写真のような歯肉の腫れがある場合は
歯の根の細菌感染が原因であることは確かです
治療は「感染根管処置」を行いました
根の中の詰め物を丁寧に取り除き
根の長さを測る根管長測定器を用いながら治療を進めるも
何か違和感を感じ
造影性のある薬を入れて 再度レントゲンを撮影すると
根の先端から少し手前の横の部分より
薬が外に出ているのが確認できました
歯肉の脹らみは根にヒビが入り
その部分から細菌感染し膿が溜まったものでした
金属を詰めていた歯には
小さなひび割れが入っていたことより
おそらく根にヒビが入った原因は
歯ぎしりや食いしばりだと考えられます
歯の根の先端は元々 歯の種類によっても若干異なりますが
0.08mmほどの穴があいています
先端でない部分のヒビや穴は何らかの理由により
後からあいたものです
(歯科治療による場合もあります=パーフォレーション)
決して最初からあるものではありません
歯の根は本来無菌の状態を保っているのですが
後からできた穴やヒビにより多くの細菌が増殖し
痛みや腫れを繰り返します
その後 細菌は歯を支えている骨までにも影響を及ぼし
骨が吸収され 歯がぐらつき
最終的に抜歯となってしまいます
抜歯とならないように
細菌に感染した根を処置するので
「感染根管処置」といいます
根の治療を総合して「根管治療」といいますがその中の一つです
ところがこの「根管治療」は
非常に難易度の高い治療でもあります
とても難しく 時間がかかり(1~2時間以上) 手間もかかる
にも関わらず
日本の保険では 材料費すら出ないほどの
低い保険点数ゆえに治療を敬遠し
安易に抜歯してしまうことも多いのも事実です
悲しいことに歯科医師が確実な治療の術を習得していないがために
抜歯に至る場合も多々あるようです
少し前も 他院様にて治療途中の患者様が
「何度も同じところが腫れて痛くなるので先生(他院様の)から
今度同じことになったら 抜くしかないですね
と言われたんですが・・・」
と当院に来られました
レントゲンで確認すると根管治療をしっかりと行えば
全く抜く必要のないものでした
(その患者様はそのまま当院で治療を継続して完治しました)
歯科医師側も抜歯を極力回避できるように技術を習得する
それが無理であれば
他の医療機関に紹介するなどして
1本の歯の重みを真摯に受けてとめて欲しいと切に願います
安易に抜いてインプラントに・・・
なんて もってのほかです!
クリーン歯科では
どんなに 難しくても
どんなに 時間がかかっても
どんなに 手間がかかっても
その1本の歯を残すことは何よりも大切なことであり
それが歯科医師の使命であると考え
しっかりと治療いたします
抜くことは簡単です
しかし それは
最後の選択であるべきだと思います
常に努力し続け 学習と経験を重ねることにより
しっかりと 歯を残す治療をしていますと 言い切れるだけの
熟練した技術を習得しています
さて冒頭の患者様ですが
根管治療の基本をしっかりとふまえ
リーマやファイルなどの切削器具を用いて根管を広げる 根管拡大 →
次亜塩素酸ナトリウム・EDTAにて根管を洗浄する 根管洗浄 →
水酸化カルシウムにて根管内を殺菌消毒する 根管貼薬(チョウヤク) →
最後に
MTAセメントにて根を先端まで隙間なく詰める 根充(コンジュウ)
これで「感染根管処置」は終了です
この一連の過程 どれもが大切であり一つでも省いたり
中途半端な状態で次の過程に進んでも
治療は台無しとなってしまいます
治療は長引いてしまうこともありますが
ひとつひとつの過程を見極めながら進めることにより
治療結果は格段に上がります
レントゲンでも確認できますが
根の先端・根の横のヒビもしっかりと封鎖されています
その後デュアルキュア型の支台築造用コンポジットレジンで土台を作り
オールセラミックの白いかぶせ物をセットし
今後 同じことにならないように
歯の負担軽減のためナイトガードを作製して治療を終えました